PMとPMOの違い
- Akihiro Goto
- 2021年5月4日
- 読了時間: 4分

PM = Project Manager
PMO = Project Management Office
両者は、プロジェクト実行におけるプロジェクト管理に関わるタスクを遂行するメンバ及びポジションとして、同等な取扱いをする場合もあるが、実際は明確に異なる。今回はこの違いを整理してみた。
PMとPMOの定義
PM(プロジェクトマネジャー)を別の用語で呼ぶなら、プロジェクトリーダー、プロジェクト責任者、プロジェクト統括、といったタイトルがよく使われる。一方、PMOの場合は、プロジェクト事務局、プロジェクト運営窓口、ファシリテーター、など。
PMは、原則として特定個人を指すのに対し、PMOは事務局のような組織・チームを指すこともある。規模が小さいプロジェクトならPMOは結果として特定個人1名を指す場合もあるが、PMOはその組織・個人が担う「ファンクション」に重点が置かれている。一方、PMはPMというポジションが有する権限・責任を執行する人物自身に密接に結びつけて捉える傾向がある。
また、PMを一国の内閣総理大臣、PMOの内閣官房(そのリーダーが官房長官)に例える人もいる。これは、分かりやすい例えかも知れない。PMOは、会議を運営したり、様々なプロジェクト上の指示を関係者へ向けて発信するため、PMと同等の権限・責任があるような印象を与えることがあるが、官房長官も、政府の公式見解を伝えるなど国民の前に頻繁に登場するために目立つ存在になるのと似ている。しかし、官房長官には自らが国の重要な意思決定を下す権限がないのと同様に、プロジェクトにおいても重要な意思決定を下すのはPMであり、PMOではない。
PMOがPMの代わりを務めることは(原則)できない。
リーダー・サブリーダー、社長・副社長、部長・副部長、のように、重要なポジションに対して、次の序列となるポジションを置いた場合、もし何らかの事情によりリーダー・社長・部長が業務執行できない場合は、サブリーダー・副社長・副部長が代行として業務執行にあたる。よって、PMの業務を代行できるのはサブPMであり、PMOではない。
サブPMを置いていないプロジェクトでは、PMの指示によりPMOが臨時的にPMとしての業務執行を行うこともあるが、これはあくまで例外的なケースと捉える方がよい。
なので、PMOがPMの代わりを務めることは原則できないのである。
PMは意思決定の権限と責任を有するため、これはプロジェクトにおいては発注側企業から選任される人物のみが担えるポジションであるのに対し、PMOは、プロジェクト管理を円滑に執り行うことのスキルを有していることが資格要件であるため、資格を満たしていればその出身母体は問われない。従って、発注側企業から選出されることもあれば、受注側企業から選出されることもあり、また、第三者の企業から外部調達される場合もある。或いは、複数メンバから成るチームとしてPMOが組成されることもある。
発注側企業が、自らのプロジェクト要員不足を補うために、発注側企業の業務を代行できる人材を外部調達するケースはよく見受けられるが、PMを外部調達するというのは、構造的には成立しない。外部人材が発注側企業社内の重要な意思決定を下すことはできないからである。それでも、社外の人材にPMを委ねたい場合には、その人材を一時的にせよ雇用するとか、出向により発注側企業当事者の立場を与えるなどの措置により解決を図る必要がある。
PMとPMOの兼務は危険
PMとPMOを同一人物が兼務する場合、要注意である。上述したPMとPMOの違いを認識していない可能性があるからである。プロジェクト規模が小さいために便宜的に兼ねる場合はよいが、大規模なプロジェクトでは、PM及びPMOの双方において一定以上の業務は発生するはずであり、これは各々に専門性やプライオリティを持った適材がアサインされなければならない。もし、リソース不足などを理由に同一人物が兼務した場合、いずれかの業務が手薄となってしまうことで理想的なプロジェクト運営を妨げる要因になりかねない。
また、PMOはPMに対する第三者的な立場からの牽制の役割も有するので、その意味でも兼務は望ましくないと言える。PMは、自らが意思決定に権限・責任があることから、主観的な判断の偏りが生じるリスクは常にあるため、PMOによる情報収集、問題分析・評価、取り得る選択肢の提示などがこのリスクを回避するために大変重要なのである。
PMOの存在価値
以上の通り、PMOはPMとは異なる存在であり、私はプロジェクト体制上も明確に区別されるべきであると考えている。プロジェクトの主役は、その中の膨大なタスク実務を遂行する担当者とその管理者であり、PMOは彼らを支えるサポート役でなければならない。ただし、この「サポート」の内容は、事務的な手続きを指す場合から、プロジェクトマネジメントの豊富な知識・経験を活かした効率的・効果的なプロジェクト運営を指南するプロフェッショナルサービスに至るまで、プロジェクトによって定義は様々である。
PMOは、自らが意思決定をする立場にはなく、あくまで脇役であるが、PMのより良い意思決定のためのサポート、プロジェクトメンバのより効率的・効果的なタスク遂行のためのサポート、のためには不可欠な存在であると考えている。
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