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PMOのコモディティ化と専門化②

  • 執筆者の写真: Akihiro Goto
    Akihiro Goto
  • 2020年5月29日
  • 読了時間: 4分

PMO = Project Management Office (前回の続きです)

前回は、PMOのコモディティ化について触れました。今回は、専門化について考えてみたいと思います。


以前、広告会社に勤めていた時に、中国に約10年間駐在させてもらいました。赴任当初はIT担当でしたが、その後、経営企画部門に異動し、主にコーポレート部門における業務改革、制度やシステムの導入など、様々なプロジェクトに参画する機会を得ることができました。いずれも役割はプロジェクト管理、つまりPMO的なポジションが多かったと思います。

その中でも、特に印象に残っているプロジェクトの一つに「オフィス統合プロジェクト」があります。私が勤めていた広告会社はグローバル・エージェンシー・グループの一つに数えられており、グループ内に多くの会社(ブランド・エージェンシー、メディア・エージェンシー、クリエイティブ・ブティック、など)が存在しており、それぞれ独立した企業として社屋を構えて事業を行っていました。私が駐在している時に、グループ経営統合を強力に推し進める方針が決まり、都市毎にグループ会社のオフィスも一箇所へ集約することになったのです。具体的には、北京・上海・広州の3都市に殆どのグループ会社が拠点を構えていましたので、この3拠点で、グループが入居するオフィスを選定し、グループ会社には一斉にオフィス移転をしてもらう、というプロジェクトです。


私は、建築や不動産業界に詳しいわけではありませんが、当時、中国におけるアドミニストレーション部門の責任者をしていたので、このプロジェクトのリーダーにも任命されました。大変エキサイティングな仕事であり、工事期間中は、まさに工事現場に設置された事務所でヘルメットを被って、毎週施工業者からの作業報告を聞いていました。


プロジェクト実施中に発生した課題は、数えあげるとキリがありませんし、その内容も千差万別です。例えば、北京でのプロジェクトでは、当時もPM2.5の環境問題が深刻であり、政府はPM2.5濃度が高い日は屋外での建設工事を禁止するなどの措置を取っていたので、常に工事の納期遅延のリスクと格闘していました。


しかし、最も難しかった課題は「風水」です。中国では、オフィスの場所、レイアウト設計、内装、全てにおいて風水を重じて意思決定していきます。フロア内における方角では、やはり南側の方が風水上は好まれ、反対に北側は敬遠されがちです。もし1つの会社であれば、社長をトップに、上から偉い順に役員の個室や担当部門を決めていけばいいのですが、私の担当したプロジェクトは多くの会社が関わっており、それぞれの会社が対等の立場であるため、フロア位置の要望がバッティングしたり、内装への要望が衝突したりするのです。各社からの要望と、オフィス建築上の物理的制約などと常に睨めっこして、一つ一つ課題を解決していかなければなりませんでした。


ある2社が対立した時に、両者の話合いにより円満解決、なんてことはまずありません。従って、PMO(私)が解決案を提示して両者を納得させる必要があります。例えば、A社とB社の希望するフロア位置がバッティングした場合、両者のそれ以外の要望も注意深く把握し、A社のフロア希望を受け入れる代わりに、B社の他の要望を受け入れるとか。そしてA社に対しては、他の要望の何かを却下することで、B社にとっても公平で納得がいくようにバランスを取ることも重要です。


当時、毎日毎日、本当に悩みました。ビルは通常、真ん中にエレベータなどの設備機能を配置するのが一般的なのですが、そうすると必ず「南側」と「北側」が存在します。であれば、「南向きに立つ扇形のビル形状にして、北側にあたる扇の鋭角部分にエレベータやトイレなどを配置すれば、全部南向きのフロアになるじゃないか」と、街のビル群を恨めしく眺めながらボーッと考えたことを今でも思い出します。


このプロジェクトから得たこと、一つは風水にとても詳しくなったことです(笑)。それ以上に得られたのは、実はプロジェクトマネジメントのノウハウでした。上司やグループ会社の社長から常にチャレンジを受けて大変苦労しましたが、一つ一つ問題を解決していくにつれて、工事も進み、オフィスも徐々に形になっていき、そして最後には完成してグループ会社が引越し、新たな職場空間が生まれた時には、達成感が湧いてきました(私が関わることの多いITプロジェクトは、実はこのように可視化できるような完成物・完了の瞬間というのが希薄であるので、尚更、嬉しかったのかもしれません)。


もう一つ、当時の同僚に言われて記憶に残っていることがあります。「あなたは、建築や不動産が専門なわけではないのに、なぜこのプロジェクトをマネジメントできるのですか?」


次回、この続きをお話した上で、「PMOの専門化」についての考察をしていきたいと思います。






 
 
 

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