無形(intangible)の資産価値
- Akihiro Goto
- 2023年5月7日
- 読了時間: 3分
新しい決算期が始まったと思ったら、早くも最初の月次決算だ。企業会計の数字では表せない、無形の資産(と負債)について考えてみた。

有形資産は、無形資産の価値の結果
tangible 有形の、実体のある、実際の、具体的な。
intangible 無形の、実態のない、触れることのできない、曖昧な。
私は以前から、なぜかtangibleとintangibleという言葉が好きだ。一般的には、tangibleである方が価値が客観的に保証されやすい。現代社会や資本主義、資本主義における企業経営は有価証券報告書の資産勘定に掲載されている有形資産の価値、tangible asset を拠所に回っている。
しかし、tangile asset が勝手に産まれ、増えていくことはない(金融商品を除いて)。顧客、消費者にとって価値のある商品、サービスを考案し、提供し、その価値を認めて購入してくれた顧客から受け取る金銭的対価の蓄積の結果として、tangible assetが形成されていく。物理的に手に取れる商品はtangible asset だが、商品の企画は人々のアイデアやひらめき、つまりintagible assetから産まれたものだ。
サービスも然りである。サービスは無形であり本来はintangibleであるが、そのサービスの効用を顧客が認め、金銭を提供してもサービスを授与したいと考えることでtangible assetに代わる。労働集約的なサービスは投入される労働力の有限性があるが、新たに投下すべき資本・原価が殆ど必要のないサービスがtangible assetとして認知されると、そのROIは理論上、無限大に引き上げることもできる。
金銭価値が指標となる資本主義に対する批判と現状
資本主義は、人々の欲求をベースとして、企業が提供する様々な商品やサービスに対して、その対価性を金銭価値で評価し、貨幣と商品・サービスの交換を行う市場を形成し、その市場原理である自由な競争、意思決定によって発展を続けてきた。資本主義は、その原理をうまく味方につければ莫大な金銭的リターンを得ることができ、特にサービス産業の台頭によってこの傾向は近年顕著となり、経済格差の拡大を生んでいるという点で批判を受けることが増えている。金銭価値に傾斜しすぎであるとし、それ以外の価値に根付いたシステム、例えば社会貢献に対する価値で評価する新しいシステムへの移行が必要という指摘も多い。
この問題は、富の再配分という議論に必ず展開される。富裕層に集中した金銭的資産を高い税率によって国(政府)が回収し、広く国民全員が恩恵を受ける社会福祉に投下することにより、富の再配分を実現するというもので、北欧諸国では現実の社会システムとして運用されている。
日本でも、経済格差の拡大は社会問題として取り上げられるが、欧米諸国や中国と比べれば、その格差は比較的大きくないとされている。
格差の問題は、国や地域間の問題としても存在しており、それを富の再配分により解決しようとするならば、グローバルでいったん余剰している富を回収し、それを貧しい国や地域へ再配分するという理屈になるが、果たして、これが現実的に受け入れられるのは相当困難であろう。
長い目で、無形資産を増やす努力と姿勢
今のところ、経済的価値(tangible asset)が企業評価の主役であり、その価値を増大することが企業の行動目標となることに対してのパラダイムシフトは起きないだろうと見ている。ただ、経済的価値(tangible)はあくまで結果であり、それを産み出す源は、アイデアや発想というintangibleな財産である。intangible asset は、それだけではない。信用もそうである。誠意、誠実といった姿勢もそうであり、謙虚、譲歩といった態度もそうである。これらは、短期的なtangile assetを獲得する上ではあまり役に立たない。しかし、これらの価値をこつこつと貯めていくことにより、中長期的にtangible assetへの変換が期待できるようになる。intangible assetは、時間をかける必要があり、簡単に見かけで模倣ができないという点で、tangible assetとしての資産価値も非常に強固なものとなっていく。
intangible である価値を大切にしたい。
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