投資について考える
- Akihiro Goto
- 2022年2月23日
- 読了時間: 5分

私は、投資が得意ではないと思っている。特にお金の投資。なかなか満足のいく資産運用はできていないと感じており、写真にあるような本を見つけると、何かヒントがないものかと読みふけってしまう。資産運用から、人に自慢できるような大きな利益を掴んだことは一度もない。ただ、打ちひしがれるような大損をしたこともない。つまり、大儲けを夢見ながらも、そのためのリスクを取れない、中途半端な小心者の投資家なのであろう。
この本(The Psychology of Money)は、資産運用のファイナンス・ノウハウを記したものではなく、お金に向き合う人間側の心理的本能に焦点を当てており、自分自身の人生の目的から出発し、それを第一に考えた場合のお金との付き合い方を筆者なりの価値観に基づいて解説している。彼が勧める資産運用の方法は、決して目新しいものではなく、非常にオーソドックスでむしろコンサバなアプローチである。「一生お金に困らない」ような大金を手に入れるための指南書では全くなく、お金で悩まず、人生にとって最も大切なことを安心して楽しむことが本当の「富」であると主張する。サブタイトルから受けるイメージからかなり内容は異なっている印象であった。
この本のメッセージは、次の通り。
本書が教えてくれる普遍的な真理
物事がうまくいっているときには慎重に、うまくいかないときには寛容に
エゴを減らせば、豊かになれる
「夜、安心して眠れること」を優先してお金の管理をすべし
投資で結果を出す最大の秘訣は、時間軸を長くすること
うまくいかないことがあっても問題ないと考える。半分は間違っていても、資産は増やせる。
自分の時間をコントロールするためにお金を貯め、使う
他人に富を見せびらかさず、誠実に人と接しよう
貯金をする。ただ貯金する。貯めるのに特別な理由は必要ない
成功のために必要な代償を見極め、それを支払う準備をする
「誤りの余地」を何よりも大切にする
極端な経済的判断は避ける
リスクを好きになること。リスクは時間の経過とともに利益を生む
自分がしているゲームを明確にする
多様な意見を認める
投資の対象は、お金だけではない。
投資と聞くと、お金の話だと決めつけてしまいがちだが、我々が人生の中で投資しなければならないことは他にも沢山ある。自分自身を高めるためのキャリアアップ投資、自分の子供への教育投資、家族や友人とかけがえのない思い出を重ねるための投資、自分の人生を楽しむ上で最も大切な資本となる心身の健康への投資。
これらへの投資は、お金を必要とする場合もあるが、全くお金を必要とせず投資できることも多い。また、これらへの投資が、結果的にお金を将来増やす上でも最も効果的な投資となる場合もある。例えば、自分自身のスキルアップに時間とお金を使うことで、仕事のキャリアアップに大いに繋がり、将来の収入を大幅に増やすことに成功するケースは、金融投資に比べてずっとリターンの大きい投資となる。
つまり、手持ちのお金をいかに資産運用によって効率よく増やすか、ということに固執しすぎるのではなく、投資対象をバランスよく見極めて人生を過ごしていくことが大切である。資産運用だけが人生の全てではないという心構えを持てば、高いリターンを狙ってリスクの高すぎる運用方法にチャレンジしてしまう過ちをなくすことができる。
リスクは入場料であって罰金(ペナルティ)ではない
お金の投資が人生の全てではないという気持ちのゆとりを持った上で、一方で、お金は自分の目標を達成するために必要となる大切な資源・手段となり得る。将来の不測事態に備えるためにもあった方がよい。従って、自らの手元にあるお金を少しでも増やせるのであれば、それに越したことはない。
現代において、全くリスクを取らないで(元本保証)、リターンを期待する(利回り)ことはほぼ不可能である。ビジネスにおいても、高いリターンを獲得した企業や経営者は、相応のリスクをテイクしているからであり、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターン、そしてノーリスク・ノーリターンなのである。そう考えれば、資産投資によって生じかねない損失は、投資に失敗したことへの罰金では決してなく、リターンを期待できる世界への入場料であると考えることで、この損失リスクを合理的に受け入れられるのではないだろうか。勿論、この入場料は、自らが許容できる相応の水準でなければならないので、入場料すなわち損失が妥当な水準を超えてしまったのであれば、すぐに退場するという自己制御が大切になる。ただ、それによって生じた損失は、資産運用の世界においては必要なコストであったと冷静に受け止められることが大切である。
プロジェクトにおけるリスクマネジメントとの共通点
プロジェクトのリスクマネジメントでは、発生する可能性のあるリスクをきちんと特定し、それが発生したときに備えておくがこと要である。この、特定されたリスクを「既知の未知」と呼ぶ。リスクであっても、予め発生を想定しておけば(既知)、マネジメント可能であるという考え方である。将来の不測事態は「未知」なことであるが、その発生を想定しておいた事象であれば、冷静に対処できる。よって、リスク対応のために用意しておくコストは予備費用という言い方をすることが多いが、プロジェクトの成功にとって必要なコストなのである。
投資においても、想定され得る不測事態と、それが発生したときに生じる損失や対処するためのコストを予め見込んでおくことが肝要かと思う。そのコストの負担は有限であるという前提をきちんと持ち、負担の限度を超えるようであれば(損失が想定より拡大するようであれば)、その時点で精算する割り切りが必要である。それによって幾らかの損失が発生しても、それは投資の必要コストなのである。
プロジェクトが万事うまく行く前提で、予備費用も一切用意せずに進めていくのは、リスクが生じたときへの対応力を持たないという点で望ましいとは言えない。投資も、一切のリスクをテイクすることなく資産を増やそうとしても、それは不可能に近いのかも知れない。
Comments