変化するプロジェクトマネジメント
- Akihiro Goto
- 2022年1月29日
- 読了時間: 3分

時代の変化に合わせ、プロジェクトマネジメントも新たな段階へ移行している。この象徴として、昨年PMBOKが第6版から第7版へアップグレードされ、内容が大幅に刷新された。Harbard Business Review 誌も最新号で特集として取り上げている(写真)。
「インプットとアウトプット」から「成果と価値」へ
PMBOKの今回改版が従来と比べて非常に大きかったため、戸惑っている方も多いと思う。これまで(第6版)の方法論が否定されたかのような誤解を生みかねないが、決してそんなことはない。第6版までの方法論を技法としてのベースにしながら、これまでプロジェクトマネジメント領域で取り上げられることのなかった原理・原則への回帰や、成果・価値を実現することの重要性に焦点を当てたのが第7版の狙いである。
プロジェクト管理は、インプットすなわち投入リソース(人、時間、カネ)と、アウトプットすなわち成果物をミートさせるためのマネジメント技法であり、そのための合理的な計画を立て、実行が計画通りに推移しているかモニタリングし、もし推移していない場合はどのように軌道修正して当初のアウトプット(成果物)を実現するか、ということを追求したノウハウの結晶である。
「How to 」から「Why」へ
ビジネス環境が安定的であれば、プロジェクトの目的・目標も普遍的なものになる傾向があり、そのような環境下では、プロジェクトマネジメントの主眼は「どのように推進するか?」という「How to」に置けばよかった。勿論、常に想定外の事象が起きることに備えるためのリスクマネジメントはPMBOKの知識体系の1つであり、環境変化が加速している昨今においては、より重要な領域としての認知が高まってきている。ただ、PMBOK第6版までの基本的なスタンスは、プロジェクトの目的・目標は開始前にセットされる与件として扱われ、それを実現するための合理的な計画策定と、計画通りにタスクを進めるための実行・監視オペレーションの知見・ノウハウを知識体系の中心に据えていた。
しかし、ビジネス環境はますます複雑となり、変化は加速している。プロジェクトも、計画時点での想定を大きく超える環境変化に飲み込まれるような事態が増えている。このような状況下では、抜本的なアプローチの見直し、計画の刷新が必要となることがある。その時に重要なのが、プロジェクトの目的・目標への立ち返り、つまり「Why」への回帰である。
「なぜ、このプロジェクトをやっているのか?」本来、この部分がプロジェクトマネジャーは勿論、ステークホルダーとの間で共有され、共感されていてプロジェクトは意味のある活動となり、あらゆる不測事態に対してもブレることなく推進できるのである。これまでHow to にフォーカスしてきたPMBOKが、第7版において大きくコンセプトを変えようとしているのは、まさにこのWhy への原点回帰が背景にあると私は捉えている。
イヌ型からネコ型のプロジェクトマネジメント思考
犬は、飼い主に従順であることから、組織や上司の指示に忠実に従うタイプをイヌ型と呼ぶことがあり、猫は、もっと自由きままであることから、自分の願望、自分自身に忠実であるタイプをネコ型と呼ぶことがある。
これまでのプロジェクトマネジメントは、決まられたルール(計画)通りにいかに実行するかという点に重きがあったという意味でイヌ型の傾向が強いと言えるかも知れない。一方、今後はプロジェクト本来の目的・目標を中心に据え、成果と価値を創出するために、ルールややり方は柔軟に俊敏にアジャストしていくと発想が求められている。これを最優先すべき自分自身の目標・使命であるとし、日常のプロジェクトマネジメントの進め方や対応はルールに縛られないで都度状況に応じて変化させていく、いわばネコ型を志向するべきではないだろうか。猫の身のこなしの柔軟さや俊敏さには、いつも驚かされる。そんなプロジェクトマネジメントをこれからは追求していくのも良いかもしれない。
追加コメント
追加コメント
プロジェクトマネジメント論を大幅にアップデートしなければならない時期に来ているのは興味深いです。