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リスクマネジメントなきコロナ対策

  • 執筆者の写真: Akihiro Goto
    Akihiro Goto
  • 2021年1月11日
  • 読了時間: 5分

日本は昨年末より、第1波・第2波とは比較にならないほど大きな第3波に襲われているが、我が国の対策はリスクマネジメントの脆弱さを感じざるを得ない。

先日の首相インタビューで記者が「緊急事態宣言の終了を予定している2/7時点で感染が収束していなかった場合、次はどのようにされるのですか?」と質問したのに対し、菅首相は「仮定の話には今は答えられない。とにかく収束へ向かうように全力を尽くす」との回答をされていたが、この発言に強い違和感を感じた。


プロジェクトマネジメントに置き換えて考えたときに、もしこれがプロジェクトマネジャーの発言だとしたら、残念ながらマネジャーとしては失格である。


どんなプロジェクトにも明確なゴールがあり、典型的なのはITシステム開発における新システムの本番リリースである。予め設定したリリース日に、求められる品質を担保した状態でシステムの本番稼働が始まることを目指すが、どんなプロジェクトであっても、多かれ少なかれ途中で課題やリスクが発生する。それらの課題を解決し、リスクを回避しながら予定通りにリリース日を迎えることがプロジェクトマネジメントの最大の目的である。しかし、不可抗力も含め、回避しきれないリスクの可能性をゼロにできないことも事実であり、それが現実となったときの対処策を予め決めておく、これが「コンティンジェンシープラン」である(代替案という意味で、プランBと呼ぶ場合もある)。


コンティンジェンシープランは、その発生確率の大小にかかわらず、プロジェクトにおけるリスクマネジメントとして必要である。なぜなら、不確実な要素を完全排除できない状況下では、もしもリスクが顕在化してしまったときに、その影響範囲を事前に把握し、どんな対処をすべきかを予め決めておくことにより、迅速に対処し、その影響を最小限に留めたり、致命的な事態を招くことを回避することが可能となるからである。


2/7に事態を収束させようと取組んでいる現在の緊急事態宣言だが、収束できなかった場合にどうするのか、ということへの備えはこのコンティンジェンシープランに相当する。既に綿密なコンティンジェンシープランが練られており用意されているが、ただ公然の発言としては「仮定の話には答えられない」と首相が答えたのであればよいが、もしも本当に「仮定のことだから未だ考えていない」ということだとしたら、これは非常に深刻な問題である。


2/7に事態が収束したときのことより、収束しなかったときのプランの方が大事。

人は誰もが物事が順調にいくことを願っているし、そのことばかりを考えてしまうが、うまくいかなかった時のことにフォーカスするのがプロジェクトマネジメントである。今回の緊急事態宣言、今でも既に功を奏すのかどうか疑問視されているくらいだから、2/7に事態が収束しなかったときのことを想定し、入念な計画を立てておくことは絶対不可欠である。例えば、緊急事態期間を延長するのか、延長する場合はいつまでか、その場合の補償はどうするのか、制限要請の対象は拡げるのか、などなど、考えておかなければならないことは山積みであり、それを2/7の直前になってから検討を始めていては完全に手遅れである。


私は、今の段階から、もし2/7に収束しなかったら次はどうするのか、を国民に明確に提示しておくべきだと考える。仮に、もう1ヶ月延長する想定である場合、それを聞いた国民にとっても「さらに1ヶ月延長は勘弁したい。だから、今はできる限りの感染防止をしなければ」という意識・自覚が高まるのではないだろうか。


2/7までに、何度かのチェックポイントを設けるべき

ゴールの直前になって「さあ成功か失敗か?」とドキドキするのでは、サイコロを振って出る目を待つ賭け事のようなものであり、プロジェクトとしてのリスクマネジメントにはなっていない。プロジェクトでは、ゴールする基準を達成できるかどうかを途中で検証するチェックポイントを何度も設定する。人は主観で都合よく考えたがる性を持っているため、このチェックが甘くならないように、予めチェックのためのKPIを設定しておく。KPIは定量化された指標であることが望ましいが、判断が明快になるような条件設定も有効である(例:この時点で、〇〇タスクが完全に終了していること)。


途中のチェックポイントでKPIをクリアしなかった場合、その時点で対策を検討しなければならない。つまり、プロジェクトの課題やリスクを早期に察知し、すぐに対策を講じることによって最終的な成功の確率を高めることができる。また、当初目標の実現が困難と判断されれば、すぐに計画を変更することで影響を最小限に留めることにもつながる。


2/7の事態収束へ向けて、政府はどんなチェックポイントを設けているのだろうか?1日の新規感染者の数だけではなく、増減率、死亡者数、病院の逼迫状況、感染経路からの傾向分析、など色々な角度からKPIを設定しておき、常に客観的で偏りがなく、迅速な意思決定ができるマネジメント体制が求められているはずである。


以前のブログにも書いたが、何か重要な意思決定をする時には、多くの人から色々な意見を聞くことも重要であるが、最後は少人数またはリーダーによる意思決定が必要であると考える。多くの意見を取り入れようとするあまり総花的な結果となり、中途半端になるリスクがあるからである。今回のコロナ禍では、対策が成功している国とそうではない国の明暗がはっきりなってきているが、成功するための最も重要な要因(KSF)は、リーダーの質そのもの(またはリーダーの意思決定を支援するマネジメントチームの品質)に帰結しつつあるかも知れない。


参考:2020/7に第2波が始まった頃に書いたブログですが、改めて内容に痛感しています。

「コロナ禍とプロジェクト管理の共通点」

「リカバリーモードへの方向転換」




 
 
 

1 Comment


houtengzhanghong
houtengzhanghong
Feb 28, 2022

ゴールだけではなく途中経過を見て、物事が順調に進んでいるのかどうかを確認することが大事ですね。コロナの問題においても、チェックポイントを設け、状況を客観的に判断してその後の計画を立てていく必要があると思います。

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