プロジェクト管理の想像力
- Akihiro Goto
- 2021年5月29日
- 読了時間: 4分
曖昧なことをはっきりさせる、形にする、人が動くことができるタスクに落し込む、このためには、プロジェクトマネジャーにも柔軟な想像力が求められる。

ぼんやりしていて、手が止まる、思考が止まる。
プロジェクトは、二つとして同じものはない。もちろん、その目的や環境によってそっくりのプロジェクトは沢山あるが、関わる人々が違えば考えも異なるし、企業が違えばリソースの制約も異なるし、実施時期が違えば取り巻く環境も異なる。
ましてや、近年では課題が複雑化し、技術進化がめまぐるしく、スピードが益々求められているプロジェクトばかり。そんなプロジェクトにおいて、課題やタスクを目の前にした時に、ぼんやりはしなきゃいけないことが分かっているが、どこから手をつければよいか分からない。だから、ついつい手が止まっている人を見かけることがある。
未だキャリアを積み始めたばかりのスタッフであれば、マネジャーの指示を待てばよいかも知れないが(本当は、これも問題ではあるが)、マネジャー自身が思考停止になってしまっては、プロジェクトを危険にさらすことになる。
想像と創造の違いと、私の理解
一般的な定義では、
想像
実際に経験していないことを、こうではないかとおしはかること。
何かを思うこと
創造
新たに造ること。新しいものを造りはじめること。
何かをつくり出すこと
ビジネスでは、「創造」の方が多用されることが多いが、「想像」には「何らかの根拠を基に新しく物事を思い浮かべる」といったニュアンスがあり、全く新しい、現実にはない物を思い浮かべるとしても、そこには既知の出来事や情報に基づいた推量があるという意味を含んでいる。これが、ここで私が言いたいことの解釈に近いので、「想像」の方を使っている。
想像は、ただ夢想することを指していない。仮に何かを夢想するにしても、人間は、自ら経験したことがない、見たことがないことを頭の中で作り出すことは困難で、過去の記憶、体験から無意識のうちに影響を受けているはずである。
プロジェクトで課題に直面したとき、また、プロジェクト計画をゼロから作らなければならないとき、この想像力が大いに試されるだと思っている。
経験・知識の良い所と悪い所
既知の出来事や情報に基づいて推し量り、目の前の課題に対する解決策を立案する、プロジェクトをどのように進めるかの方針を立てる、さらに具体的なタスクへ落し込む、まさしくプロジェクトマネジャーに求められるコア・コンピタンスである。この能力を磨くには、普通に考えれば、経験や知識は多ければ多いほどよい、別の言い方をすると、引き出しは多いほどよい、ということになる。
しかし一方で、過去の経験や、一般的に正しいとされる知識が、かえって邪魔をする場合もある。例えば、プロジェクトの置かれている状況が全く違うのに、過去の成功体験を引きずり、盲目的にこれまでのやり方を適用してしまうケースである。冒頭にも書いた通り、「プロジェクトは二つとして同じものはない」ことを忘れてはいけない。
想像力の威力
だから私は、想像力がいかに大切かを常日頃感じることが多い。過去の経験の応用、知識・方法論の適用、教科書の活用、といったニュアンスではない、まさに「想像」して生み出す能力のことである。
プロジェクトマネジメントには、高いコミュニケーション能力が問われるが、対人コミュニケーションの根幹は、相手の気持ちを推し量ること、である。つまり、相手の期待や問題意識をどれだけ想像できるか、これが最も重要な要素である。自分本人の期待や思い込み、または教科書から得た知識からコミュニケーションを始めようとする人がいるが、出発点を間違えている。
想像力を発揮するには、勇気も必要だ。新しい物事を思い浮かべ、それを他人に提案するわけだが、それが必ず正しいという保証はないわけだから、ここで責任が生じてくる(この責任を回避する方法は、ただひたすら悩み続ける、ぼんやりしたままやり過ごす、ことだ)。
仕事の価値というのは、この勇気や責任と比例するのだと思う。優秀なプロジェクトマネジャーが持ち合わせている価値と言える。
プロジェクト管理能力 = 想像力 = 経験・知識の豊富さ × 勇気・責任感
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