ニュー・ノーマルは幻想?
- Akihiro Goto
- 2020年7月20日
- 読了時間: 4分
新しい時代は、本当にやって来るのか?
コロナ禍が長期化し、生活様式ががらりと変わり、新しい常識の時代=ニュー・ノーマル時代が到来。今や、誰もが毎日耳にするメッセージです。
これまでの常識が覆され、色々な変化が叫ばれています。例えば、
・デジタルシフト
・リアルからオンライン・VR
・資本主義の終焉
・グローバリズムの終焉
・東京一極集中から地方分散へ
・都会から田舎へ
・量から質へ
・自由より安全
・物的所有よりも共感・つながり
・自然との共生
コロナが、現代の人間社会に警笛を鳴らしパラダイムの大転換を促しているという、まるで神の思し召しのような風潮すらあります。
私は、いずれの視座にも「そうだよな」と同意しつつ、でも、そんな大転換が本当に起きるのだろうか、という引っかかりがあり、どうもピンと来ないのが正直なところです。確かに、リモートワーク普及により、在宅勤務が増えることは確実でしょうし、そうあってほしいと思います。しかし、ソーシャルディスタンスを前提に、あらゆる生活様式が大きく変わってしまうかというと、その確信がまだありません。
理由は二つあります。一つは、いずれワクチンが開発され、コロナがインフルエンザのような病気として扱われるようになれば、コロナがなかった時代へ戻ることはごく自然であること。もう一つは、多くの人間には、ビフォーコロナの頃の生活に戻りたいという潜在的な欲求があるのだと思うこと、です。
現在、感染第2派の到来により、東京の感染者数は急増しており、人々やメディアはこの状況に毎日騒いでいますが、自主的に緊急事態宣言の期間のような引きこもり生活に戻ろうとする人は少なく、むしろ、元の生活を再開しようとする人の方が圧倒的に多い気がします。勤務先の会社が出社解禁となり、やむなく通勤を再開している人もいると思いますが、食事や趣味・スポーツなどの外出行動は自分の判断ですから、やはり、人々がそれを望んでいるのだということになります。
例えば飲食、私もコロナ以前ほどではないですが、時々外食をするようになりましたが、3密を避けるように心がけていること、また、少人数での食事に限っています。大勢での宴会や、賑やかな居酒屋での食事の予定は未だありません。しかし、街の飲食店を覗くと、賑やかなお店に集いお酒を楽しく飲んでいる人々の姿を毎日見かけるようになりました。
色々と物議を醸しているGo To Travel キャンペーン、私の想像以上に利用者が多く、旅行再開への期待が高いことに改めて気づかされました。ディズニーランドのチケットも、販売開始後すぐに完売となり、なかなかゲットできないようです。感染が収束しつつある中国や韓国では、これまで抑圧されていた消費欲の反動での爆買いが起きていると聞きます。
元の生活に戻りたい、楽しみたいという人々の期待の力学が働いていることを感じます。
私自身は、社会の行動様式が一部変わり、人々の価値観が一部変わり、幾つかの新しいビジネスが創造され、我々が生きている社会における一つの転換期になるとは言え、劇的なパラダイムシフトの全てが起きるとまでは思っていません。以前の生活が戻ってくる部分は少なくないと考えています。人間は元来つながりを求める動物なので、ワクチンの開発によって接触することのリスクがなくなれば、物理的につながる・接近することを避ける(=ソーシャルディスタンスを保つ)ことの合理的理由は消滅します。
それどころか、コロナ禍において登場している色々なデジタル・VRのサービスは、リアルな世界への回帰をより増幅させる効果があると考えます。例えば、バーチャル旅行を楽しめるGoogleのストリートビューは、リアルな旅行を代替すると言うよりも、その場所をリアルに訪ねてみたいという人々の欲求をむしろ駆り立てる作用の方が強いと思います。従って、アフターコロナになったら、もっと旅行者は増えるのだと推測しています。
日本の居酒屋は、世界的にも非常に貴重な食文化です。無数にある料理をリーズナブルに気軽に楽しむことができます。小料理屋では、アットホームのこじんまりとした空間に店長も客もすっぽりと収まり、至近距離ならではの一体感が生まれます。そんな文化が消滅することはとても残念なことであり、誰も望んでいないのではないでしょうか。
今回は、プロジェクト管理とは無関係な話題になってしまいました。プロジェクト管理の業務は、その多くがリモート対応が可能であり、現在関わっているITシステム開発のプロジェクトでは、この先、プロジェクトメンバが物理的に集合することがあるのだろうか?と思ってしまうくらい、リモートで回っています。
私たちは、変わるもの→変えるべきもの、と、変わらないもの→変えるべきではないもの、この両方を意識しながらニュー・ノーマル時代を迎えることになるのだと思います。
まだまだコロナの勢いが止まらない中、もちろんマスクを着用し消毒をこまめに行う必要はありますが、以前よりはできることが増えてきたように思います。完全なニューノーマル時代は来ないかもしれません。